「大航海時代」:欧州人と初めての関わり(1)

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はじめに

 

 笑氏様 貴重なご意見ありがとうございました。私も笑氏様ほど専門家ではありませんが、さまざまな議論があることを調べさせていただきました。よって、冒頭に「さまざまな議論が・・・」と断らせていただきました。私は、あくまで日本民族の相対的な特性を述べさせていただきましたが、笑氏様の言われるような例とご指摘はもっともだと思います。一方、古来より、争いにはさまざまな要因があることも事実と考えます。争いを好まない民族が武器をとって彼らの敵に立ち向かった歴史を例示したら限りがないでしょう。

 

 本メルマガのメインテーマは、言うなれば、本来争いを好まないはずの農耕民族である日本人が、なぜ明治以降にあのような戦争を経験せざるを得なかったか、などについて、日本の暴挙だったとの一方的な見方だけでなく、世界の動きと日本の動きの両面から振り返り、(定説の中に隠れているかも知れない)そうなった背景とか要因を考えるなど、虚心坦懐に我が国の歴史を見直すことを狙いとしております。

 

 創刊準備号でも申しましたように、歴史は見方によって変わるものだと考えます。私は歴史の専門家ではありませんが、国防については、長く勉強してきました。

 

 そのような視点を持って、歴史の専門家が見落としているかも知れない「歴史を変えた要因」などをあぶり出したいと考えております。引き続き、よろしくお願い致します。

 

 2016年10月、「8世紀末の奈良時代、遣唐使に混じって『破斯(はし)』という名のペルシア人が来日し、天皇に謁見したと記してある出土遺物が確認された」とのニュースが流れました。

 

 これまで、最初に我が国を訪れたと記録に残る欧州人は、種子島へ鉄砲を伝えたポルトガル人(1543年〔42年とする説もある〕)と言われて来ましたので、欧州人ではないものの、母国ペルシアから陸路(シルクロード)を経由して中国に渡ったと推測される「破斯」の来日が事実であれば、我が国は、8世紀頃から中国や朝鮮以外の国とも交流があったことになり、「国際色豊かな平城京の姿を知る史料となりそうだ」と話題になったのでした。

 

当初の主役はポルトガルとスペイン

 

 さて今回は、我が国の戦国時代、フランシスコ・ザビエルをはじめ多くの宣教師や商人などの欧州人の来日を可能にした「大航海時代」を取り上げます。

 

「大航海時代」とは15世紀中頃から17世紀中頃まで、欧州人によるアフリカ・アジア・アメリカ大陸への大規模な航海が行なわれた時代を指します。その主役はポルトガルとスペインです。

 

 15世紀中頃の欧州は、オスマン朝トルコが全盛を極め、地中海を支配しておりましたが、両国はオスマン帝国から最も離れ、なおかつ大西洋に面しているという地理的利点がありました。

 

 大航海を可能にしたのは、「キャラック船」とか「キャラベル船」と呼ばれる大型船が建造されるようになったことでした。我が国では「南蛮船」と呼ばれるこれらの船は、日本の「和船」と違って甲板があります。甲板があれば、樽のようにいくら大きな波に揉まれても元に復元(復原)するので、大海原にこぎ出すことができるのです。

 

 また、大型船なので大量輸送に適した広い船倉を持っておりました。そして、「羅針盤」(最初に羅針盤らしきものが使われたのは3世紀の中国と言われます)が中央アジアやオスマン帝国を経て欧州に伝わりました。 

 

 このような航海技術に加え、両国には強大な権力を持つ王や航海を支援する出資者たちが出現し、海外進出の体制が整ったのでした。それでも当時の航海は、「一航海の帰還率は20%」と言われる危険極まりないものでしたが、航海が成功し、新しい領土を獲得したりするものなら莫大な富が飛び込んできました。一攫千金を狙い、早い者勝ちのような機運が人々の競争心を煽り立て、航海ブームが吹き荒れたのでした。

 

 話は逸れますが、この帰還率の低さから、出資者たちはリスクを最小限にするため、「分散投資」を採用しました。これが現在の「株」の起源と言われ、17世紀になると、「東インド会社」のような株式会社に発達していきます。

 

 こうして、「地球球体説」と西回りの航海を信じたコロンブス(ジェノバ人)がスペインの援助を得て航海し、1492年、新大陸を発見したことに始まり、バスコ・ダ・ガマ(ポルトガル人)が1498年、アフリカ大陸の最南端・喜望峰、さらにインドへの航路を発見しました。また、スペイン王の信任を得たマゼラン(ポルトガル人)が1519年、西回りに航海し、太平洋と大西洋を結ぶ南アメリカ大陸の最南端・マゼラン海峡やフィリピン諸島を発見、1522年、ついに世界一周に成功しました(マゼランは1519年、フィリピンで死亡)。

 

「トルデシリャス条約」と「サラゴア条約」

 

 この2つの条約名をすでに知っておられる読者は相当の「歴史通」と言えるでしょう。新航路発見後、スペインとポルトガルの間で、発見した土地や島の帰属をめぐる紛争がしばしば発生しました。そこで両国は無用な争いを避けるため、1494年、「トルデシリャス条約」を結びました。

 

 本条約は大西洋に浮かぶヴェルデ島の西方370レグワ(約1770q)、現在の西経45度線付近を「分界線」とし、この「分界線」の西方全域をスペイン、東方全域をポルトガルの進出範囲と定めました。驚くなかれ、両国は地球を南北に真っ二つにしてそれぞれの支配地域を決めるという乱暴な企てを行なったのでした。しかも、当時の教皇・アレクサンデル6世の承認も得たのでした。 この条約によって、オランダ、イギリス、フランスなど大航海後発国は、領土獲得の優先権から締め出される形となったのでした。

 

 そして1522年、マゼラン艦隊の生き残りが世界一周の航海を終えてヨーロッパに帰還し、地球が丸いことが実証されました。両国の間に「もう一本、線を引かないと分割の意味がない」との議論が沸き上がり、1529年、再び調整して「サラゴア条約」を結び、地球の反対側の「分界線」を定めました。

 

 その「分界線」は、東経135度付近と言われ、ちょうど日本列島の真上を分断するものでした(資料によっては東経144度30分付近との説もありますが、当時の知識や技術から誤差の範囲内と言えるでしょう)。

 

 

 

(むなかた・ひさお)

 

(平成30年(2018年)9月6日配信)



 



著者略歴

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士課程卒。 陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。 2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』などに投稿多数。


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